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02.26.2026

日本の温泉文化を楽しもう

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26.02.2026

執筆:石井宏子(温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト)

日本人の温泉観とZen(禅)の思想

日本人にとって温泉とは、単に、体の汚れを落とすとか、身体の癒しにとどまりません。日本には古くから自然信仰の考え方があり、自然は人間の力では作ることができない、人間の力がおよばない神の領域であり、天からの贈り物であるという思いがあります。温泉は生きている地球から生まれる大自然の恩恵です。その神様がくれた恩恵に感謝し、自然と人間が一体となって生きるエネルギーをもらう場所、それが温泉なのです。

何も身に着けず裸で「湯に浸かる」という日本の温泉の入り方は、あるがままの自然に身をゆだねる、自然と調和する、自分自身と静かに向き合う、といった心(精神)のケガレを洗い流して、身も心も清めるという、いわば「Zen(禅)」の世界観に通ずる精神文化があるのです。そんな日本の精神文化に思いを馳せて、日本の温泉文化を体感してみるのはいかがでしょうか。

日本ならではの温泉の入り方

自然の温泉である「湯」と向き合う。という温泉観を体験するために、日本の温泉文化に沿って温泉を楽しんでみましょう。

  1. まず、温泉には何も身に着けずに入りますので、脱衣室で全ての服を脱ぎます。大きいタオルは温泉に入った後に使いますので、脱いだ服の上にかけておきます。小さいタオルで体の前を隠しながら温泉へ向かいます。

  2. 体を洗い、シャワーで流します。他の方と同じ浴槽にはいりますので、先に汚れを落としてから入るのは、他の人への思いやりです。

  3. 浴槽に入る前にこれから入る前に、これから入る温泉を桶でくんでかけ湯をします。これは、これから入る温泉の温度や成分に体を慣らす大切な準備でもあります。タオルはぬらさないように、頭の上にのせます。かけ湯は心臓に遠い足先から上へ向かって、足、腰、肩へとかけていきます。

  4. 浴槽の中にタオルを入れないように、頭にのせるか、桶にいれて浴槽の外におきます。

  5. 温泉に浸かっている時は、大声で話したりせず、静かに過ごします。自然の恩恵である温泉と調和して、自分自身と静かに向き合う精神文化を感じてみましょう。

  6. 温泉からあがったら、タオルで全身の水をやさしくふき取ってから脱衣室へ向かいます。

日本の旅ならではの温泉に出会う

→ 自然と一体になれる「露天風呂」

日本全国には様々な美しい自然があります。海、山、森、川など、各地の温泉をとりまく自然環境を生かして、大自然と一体になれる露天風呂が人気です。

静岡県・熱海伊豆山温泉 佳ら久

露天風呂からも海と空だけの絶景が楽しめます。ぽっかりと浮かぶような初島や晴れた日には伊豆大島まで眺められます。温泉は、乾燥や冷えが気になる冬にぴったりの肌をしっとり保湿し、ポカポカにあたためる塩化物泉です。全客室に専用の温泉もあります。また、最上階にはドリンクやお菓子が自由に無料で楽しめるラウンジがあり、海の絶景を眺めて寛げます。テラスには温泉足湯もあります。

群馬県・草津温泉 西の河原露天風呂

草津の温泉街から歩いていける場所にありながら、圧倒的な解放感が味わえる大露天風呂です。冬はとても寒いですが温泉に入ってしまえば天国。温泉から立ち昇る湯煙が美しく、その向こうに雪の森が広がります。毎週、金曜日17:30~20:00は、男性露天風呂が混浴デーになり、老若男女全員が湯浴み着を着て入るので、ライトアップされた世界の中で家族や友人と一緒に気兼ねなく楽しめるのも魅力です。

新潟県・妙高赤倉温泉 赤倉観光ホテル

標高1000mに位置する妙高山の中腹に建つクラシックホテルは、どこにいても天空から眺めるような絶景と一緒に過ごせます。大浴場の露天風呂や温泉付きのスパスイートの部屋の温泉からは、遮るものがない見渡す限りの絶景をひとり占めする気分になれます。朝は雲海が出る日もあり、幻想的な雲の向こうに朝日が昇ります。温泉は、源泉かけ流しの含硫黄-カルシウム・ナトリウム・マグネシウムー硫酸塩・炭酸水素塩泉。10種類ある泉質の中でも「三大美肌泉質」と呼ばれる、硫黄(血行促進)、硫酸塩泉(しっとり保湿)、炭酸水素塩泉(すべすべ美肌)が三位一体となって働くスーパー美肌温泉です。泉質は含硫黄―カルシウム・マグネシウム・ナトリウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉、しっとり潤いなめらかな肌へ導く美肌の湯です。

→ 日本の四季を楽しむ温泉

日本には四季があります。春は桜や花見、夏は緑、秋は紅葉、冬は雪といった、季節の変化により、旅で楽しめる風景も変化します。温泉に入りながら日本の四季を楽しめる場所をご紹介します。

長野県・扉温泉 明神館

男女別露天風呂「雪月花」は絵画のように切り取られて渓谷の風景が温泉に映りこんで息をのむ美しさ。その風景の中に分け入っていくような温泉の先端は深さがある「立ち湯」になっていて、景色ぎりぎりまで立ってすすむことができる「インフィニティー」設計ですので絶景の中に浮かんでいるような気分になれます。新緑、紅葉、雪景色と四季折々の自然が楽しめます。

秋田県・乳頭温泉郷 鶴の湯温泉

鶴の湯の露天風呂は風景が美しいだけでなく、特別な温泉です。源泉がぷくぷくと湯船の底から自然湧出していて、地球から生まれたての温泉に入れる場所です。紅葉の季節もよいですが、なんといっても冬の雪の季節の鶴の湯の青白いにごり湯の露天風呂がとても美しいです。有名なのは混浴の露天風呂ですが、濁り湯で湯の中は見えないので、みなさん和気あいあいと入浴しています。もうひとつ同じくらい大きい女性専用の露天風呂もあり、こちらもぷくぷくと足元から湧く生まれたての温泉が楽しめます。源泉は4種類あり別々の湯小屋の内湯で入り比べができます。泉質はどれも含硫黄-ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉ですが、成分の濃さやバランスが違うので、感触や色などの微妙な違いを楽しみながら巡ります。硫黄の血行促進作用で、血も水もぐるぐる巡らせて、塩化物泉で体の芯まで温まり、炭酸水素塩泉で肌をなめらかに、と、温泉の力を借りて心も体も整えていきます。名物の山の芋鍋は味噌仕立てで体の中からも温まります。

→ 温泉建築の空間美を楽しむ温泉

日本の温泉建築は、独特の美しさがあります。特に、伝統的な建築を大切に残しながら温泉を守っている宿があるのも日本の温泉の楽しみです。わざわざ旅する価値を感じる唯一無二の温泉建築をご紹介します。

静岡県・修善寺温泉 新井旅館

旅館全体が国の登録有形文化財に指定されていて、伝統的な日本建築の美しさを体感できます。男女入れ替えで楽しめる大浴場や露天風呂、貸切風呂もあり、全て源泉かけ流しです。名物の天平大浴堂は、仏教芸術が花開いた天平時代をイメージした総ひのき造りの建築が見事。立つと胸元近くまで深さがある深湯は、湯の力強さを一層感じられます。とろりと柔らかに寄り添うような感触の温泉で肌も心もストレスをリリース。

群馬県・法師温泉 長寿館

温泉の鹿鳴館と称される美しい建築の法師乃湯は、足元から自然湧出する温泉に浸かれる。ほかには露天風呂も楽しめる「玉城乃湯」と、足元湧出と自噴源泉が同時に注がれる「長寿乃湯」があり、ともに男女入れ替え制で楽しめる。国登録有形文化財に指定されている「法師乃湯」は、まさに日本が誇る温泉建築の傑作。アーチ形の窓から光が降り注ぎ、湯船の底からぷくぷくと自然湧出する温泉のささやきが響く。泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉、pH8.2の弱アルカリ性。ふんわりやさしい肌触りで化粧水のようにしっとり潤う美人の湯です。源泉は自然湧出ですから4つの湯船は微妙に温度が違います。その日の温泉のご機嫌にもよりますが、だいたい一番奥がぬるめで、手前の二つには、もう一つ別の源泉も注がれているので熱めになっています。ぬるめの場所で丸太に頭をのせてじっくり長湯。じっと目を閉じると、ぷくぷくと温泉の湧く音が感じられ、静寂の中で生きている地球のささやきを聴くような自然と調和できる温泉です。

長野県・湯田中温泉 よろづや

よろづやの大浴場「桃山風呂」は、1953(昭和28)年に安土桃山時代の伽藍(がらん)建築をイメージして建てられました。のちに国の登録有形文化財に指定された日本文化を感じられる空間です。湯殿は荘厳な神社仏閣にいるかのような雰囲気。大きな楕円の湯船の容積は24トンもあり、とてつもなく豊富な自家源泉の温泉で満たされています。ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉、pH8.2の弱アルカリ性で、肌にしっとりと寄り添ってくるような美肌の湯です。お堂のような内湯の外は驚きの庭園露天風呂、日本庭園全てが岩風呂の温泉という贅沢さです。

→ プライベートで楽しめる貸切温泉

他の人と一緒に裸で温泉に入るのは恥ずかしいとか、宗教上の理由でプライベートな温泉を求めている人もいます。日本には「貸切温泉」や「家族風呂」と称される、プライベート温泉もあります。自分だけで、家族だけで、ゆっくり温泉を楽しみたいという時にも利用されています。

静岡県・北川温泉 望水

伊豆北川(ほっかわ)温泉「望水」の魅力は、圧倒的な海景色の美しさ。深い青の向こうにぽっかりと浮かぶ伊豆大島の存在がここにしかない風景を生み出しています。貸切温泉は唯一無二の海の絶景を温泉から楽しめる「プライベートガゼボ」。ガゼボとは東屋の意味で、まるで独立した東屋の温泉にいるような露天風呂で海をひとり占めできます。ぜいたくな空間の貸し切り温泉は4つあり、宿泊のゲストは1組ごとに1回50分無料で利用できます。貸し切り風呂というと、脱衣室と露天風呂だけの場合が多いですが、このプライベートガゼボには広いリビングルームもあって、黒豆茶で水分補給しながら専用のガウンを羽織ってゆったりくつろいだり、また、温泉へ入ったりして至福の時が過ごせます。源泉かけ流しの温泉は、ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉でpH7.9の弱アルカリ性、体の芯まで温まり、肌の潤いが持続します。

神奈川県・箱根湯本温泉 箱根湯寮

箱根湯本駅から近くにある日帰り温泉施設。貸切個室露天風呂(有料)が19室もある。事前に予約してからいけば、プライベートな空間で箱根の山の自然を眺めながら温泉が楽しめます。食事処やリラクゼーションマッサージもあってのんびり過ごせます。

 

日本を旅する機会に、ぜひ、日本人の精神文化を今に残す「温泉」で日本の文化に触れてみませんか。

【プロフィール】石井宏子

温泉ビューティ研究家・トラベルジャーナリスト 日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。気候療法士(ドイツ)、国際中医師の観点から温泉入浴により五臓が整う研究も行う。環境省・温泉小委員会委員、日本温泉科学会、日本温泉気候物理医学会会員。杏林大学講師(温泉療養学)著書「感動の温泉宿100」(文春新書)など。https://www.onsenbeauty.com/

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