展示

『Japanese principles : design and resources』展

無駄なく資源を活用する工夫や新素材の開発、さらにはクリエイティブによる資源再生の取り組みなどに着目した展示

火曜日~金曜日

10時~18時

土曜日/日曜日/祝日

10時~19時

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無料

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『Japanese principles : design and resources』展

多様でユニークなデザインソリューションと自然素材のサステナブルな活用に取り組む16のプロジェクトを通して、日本の伝統的な生活様式や工芸の中に培われた「資源・素材の無駄をなくし最大限活用する工夫」と「現代的な技術やデザインにより新しい価値を生み出す資源再生の取り組み」を、日本の建築、インテリア、工芸、テキスタイル、食、スポーツアイテム、楽器など様々な分野を通して紹介いたします。

 

『もったいない』

本展のインスピレーションとなったのは、日本の『無駄を出さない』哲学である『もったいない』です。もとは、『その物の本質と』という意味の仏教用語である『勿体』に日本語で否定の言葉を意味する『ない』が合わさったものです。

「日本人は、何らかの形でまだ利用できる物に対してこの言葉をよく使いますが、多くの人が資源の無駄を指すだけの概念を超えて、最大限活用し他人や自然との関係を大切にする文化的習慣・生活様式だとしています。また本展の目的は、日本の持続可能性社会に対する取組みを紹介することで、日伯間の相互交流に繋がり、ブラジルの人々が興味を持つきっかけとなっていただければ幸いです。自然との関係を意識した日本人ならではの革新的な技術を紹介しつつ、こういった習慣が日本には根付いていることを発信することです」と展示のキュレーションを務めたジャパン・ハウス サンパウロ企画局長のナターシャ・バルザギ・ジーネンは語っています。

本展での3つの視点

  • 「資源の無駄をなくす工夫」
  • 「資源を最大限活かす」
  • 「デザインにより再生する」


 

お米とその多様な活用法

日本の主食である「米」は、食べるだけでなく生活の様々な用途に利用されてきました。職人・相良育也氏は「稲藁」を使った日本の伝統技術「茅葺」で屋根を制作しています。今回、相良氏は同じ茅葺きの技術を用いた作品を特別に制作。「サンパウロ州レジストロ市で日系人によって栽培されてきた「イグサの藁」を使用し、展示終了後も素材自体を違う用途で活用する可能性を残しています。

一方、「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」による“TYPE-Ⅰ MM project”では、ソニーグループが米を脱穀した際に生じる「籾殻」を原料に開発したTriporous™という新素材の一部を用い、その特性を活かして特別な黒に染め、ブランド独自の技法「Steam Stretch」によるプリーツ加工を加えることで、服の自由な動きと軽やかさを表現しています。

デザイナー・荒木宏介氏が大鋸屑と麻を使って制作したスツール「RRR」(Rice-Reinforced Rollの略で、米を用いて強化されたロールの意)は、日本人の主食である米をペースト状の糊にして使用しています。

有効に活用

他にも、梱包資材に使用されるプラスチックの代替品として、寒天(海藻から得られる植物性のゼラチン)の多孔質で柔らかく軽い構造の有用性を探求した「Agar Plasticity」や、食品廃棄物(主に皮、種、殻、骨などの非可食部)と漆と組み合わせることで防水性や耐久性を持たせた食器「Anima」も展示されます。

使い捨ての紙の食器「WASARA」は、余剰資源となっていた竹とバガス(さとうきびの搾りかす)をアップサイクルして製造されています。プラスティックコーティングを施さないコンポスタブル製品でもあるため、環境を害さず自然へと循環していきます。

あなたは食べたものを着ますか?

沖縄の伝統技術を用いた芭蕉布は、植物の繊維を原料とし、繊維(芭蕉)が肌に付着しない軽い布に仕立てることで知られており、喜如嘉の里でしか生産されていません。本展にて来館者はその技法を用いて作られた着物を観覧することができます。また、着物は裁断する際に布の無駄を最小限にする方法が用いられています。

青:サステナブルな色

テキスタイル関連では、藍師・染師「BUAISOU」による植物を用いた古くから伝わる染色技法・藍染を用いた作品を展示。同社の職人は持続可能な生産方法で100色の青を生み出しており、用途を終えた染め液は藍畑の肥料として活用しています。

バッグブランド「PORTER」は、世界初、「ヒマ」と「とうもろこし」を原料とする100%植物由来のナイロンを用いたバッグを東レ(株)と共に開発し、量産化。「PORTER」を代表するシリーズ「TANKER」は、この新たなナイロンを使用しリニューアルしています。

自然の新たなライフサイクル

デザインオフィス「nendo」のCabbage Chair (キャベツチェアー)は、ISSEY MIYAKEブランドを象徴するプリーツ布地を製造する過程で廃棄されるプリーツ紙を使った家具です。

建築家・坂茂氏は紙管(しかん)を用いて家具から大きな建築物まで作る取り組みを行なっています。
坂氏が行なっている地震や洪水などの自然災害で住む場所を失った人々を支援する活動は世界中に広がっており、日本国内でも多くのプロジェクトが行われています。資源の無駄使いをなくし、身近な材料で強度のある資材を作り、短期間で住宅を建てるプロジェクトは、多くの発見を与えてくれます。本展では、「紙のログハウス」やその他の公共施設等でも十分使用が可能な紙管でできた背もたれのない「CARTA bench」も紹介します。

また、モルテン社がデザインオフィス「nendo」と連携した取り組み「My football kit」 プロジェクトでは、子どもたちの間でサッカーを広め、サッカーがあまり盛んではない地域でもサッカーが体験できることを目指しています。従来の膨らませるボールではなく、再生ポリプロピレンとエラストマーをベースとし、捨てるはずであったモノを再利用。組み立て式のサッカーボールを提案しています。

北海道のホタテ産業により廃棄される貝殻を使ったSHELLMETは、廃棄物による土壌汚染問題を解決しようという取り組みのもと、貝殻の炭酸カルシウムとプラスチックを組み合わせた新素材「SHELLTEC」を開発しヘルメットを製造しました。

日本ではゴミになるかも知れない素材の有効活用方法として、食品廃棄物からコンクリートより強い建材などの新素材を作る技術があります。東京大学大学院に在籍したメンバーによるスタートアップ「fabula」がこの技術の社会実装を行っています。食品を乾燥させ、粉末状にし、その粉末を熱圧縮成型。この技術により、異なる強度、テクスチャーや香りなどの特徴を生み、無数の用途に使うことで「ゴミ」の新しい使い道とライフサイクルを与えています。

漆精製職人・堤卓也氏とサーフボードのシェイパーのホドリゴ・マツダ氏は、人類が最も利用している素材の一つである木材を用いてサーフボードとスケートボードを作成。熊によって樹皮を剝がされた木材は、通常の価値を失い安価に取引されるか、廃棄されてしまいます。展示されるサーフボードとスケートボードは、ウルシの木の樹液である「漆」を施すことで疎水性と防水性を高め機能的にも唯一無二の作品が生み出されています。漆と熊剥ぎの木材。この2つの要素で生まれたプロダクトによって、自然と動物と人間の営みの循環を意識することができます。

最後は、アフリカ原産のグラナディラという木材を使用したヤマハのクラリネットプロトタイプ「Designed by Nature Clarinets」です。今回展示されるKintsugiモデルでは、均質性を重視するものづくりでは使用することが難しいほど自然素材の特徴が強く出ている木材を、た“金継ぎ”という陶器の割れや欠損を修復する技術を応用して、魅力的に、そして楽器としても個性があるものに仕上げています。

無駄のない展示

本展において、JHSPは建築家ソル・カマーショ氏が率いる建築事務所RADDARを展示レイアウトの設計製作に招いており、展示で使用されている什器やセノグラフィーに紙幣のリサイクル素材を使い、サステナビリティ精神を取り入れています。

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『Japanese principles : design and resources』展

#PrincípiosJaponeses #MottainaiNaJHSP

開催期間:2024年12月2日~2025年5月4日
入館無料

ジャパン・ハウス サンパウロでは、本展の主旨をより深くご理解いただくために、ガイドツアー、セミナー、ワークショップ、専門家によるトークイベントなど、さまざまなサイドプログラムを実施します。また、JHSPアクセシビリティプログラムの一環として、音声および手話ガイドもご用意しています。

オンライン事前予約(オプショナル):
https://agendamento.japanhousesp.com.br/

会場:ジャパン・ハウス サンパウロ GF
住所: パウリスタ大通り52番地

開館時間:
火曜日~金曜日 10時~18時
土曜日・日曜日・祝日 10時~19時

月曜日は閉館日となっております。祝日が月曜日の場合でも、閉館となっております。

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